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電気学会で論文賞を受賞しました!

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電気学会で論文賞を受賞しました!

材料技術が支える未来 「スマートウインドウの開発」

高純度化学研究所はSDGsを応援しています。
その一環で、特に、優れた技術シーズを持つ大学との共同研究開発や、学生の研究サポートを積極的に行っています。最近の事例では、大阪工業大学の研究室と、スマートウインドウの開発に取り組みました。

赤外線スマートウィンドウとは

 地球温暖化に伴う気候変動を解決するためには、熱エネルギーを効率的に使用して、物質から放出される排熱を抑制することが重要です。そこで、電気を利用せずに赤外光を選択的に反射/透過できる赤外線スマートウィンドウが注目されています。赤外線スマートウィンドウは、夏は日射の6~7割を遮断し、冬は高断熱とともに日射の赤外部分を取り入れることができる技術として、建築構造物の窓材や次世代自動車のフロントガラスなどへの応用が期待されています。

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図 環境にやさしい省エネ・スマートエコ住宅


VO2(二酸化バナジウム)とは

VO2は、約67℃を境に絶縁体-金属相転移を生じ、赤外線-可視光領域の光透過率が大きく変化する物質です。低温相では絶縁体相となり赤外線を透過するのに対し、高温相では金属相となり赤外線を遮蔽する特徴を持っています。また相変態は可逆反応であるため、赤外線の透過/遮蔽を温度により制御可能であることも特徴の一つです。

元素ドープにより相転移温度の変調が可能な点も特徴です。例えば、タングステン(W)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)などをドープすると低温度側に、クロム(Cr)をドープすると高温度側に、それぞれ相転移温度がシフトします。温度シフトは元素のドープ量に対応しており、ドープ量を制御することで任意の温度に設定可能です。また、様々な外場によっても相転移が生じるとされ、電圧、光、応力などにより相転移の制御を目指す研究例があります。

今回は、大阪工業大学 和田先生の研究室で進められているMOD法によるVO2薄膜を使用した赤外線スマートウィンドウに関するご研究を紹介します。

MOD法(metal-organic decomposition 法)とは

MOD法とは、金属の有機酸塩を溶媒中に溶かした溶液を用いる液相法の一種であり、CSD法(chemical-solution deposition)に属しています。基板に塗布し乾燥させるだけで成膜が可能です。水分との反応が少ないため、大気中で取り扱いが可能であり、比較的長期間の保管が可能な材料です。スパッタ法やPLD法などの気相成長法と比較して真空装置を不要であり、装置も大掛かりにならず安価に薄膜が作製できる点が特徴として挙げられます。

先生の研究紹介

MOD法により急速加熱冷却下で焼成したVO2薄膜は、ナノスケールモスアイ構造を有し、表面が不規則的に約200~250nm周期の不均一な突起配列を表しており、赤外線の反射率に大きく寄与しています。VO2薄膜の透過率を測定したところ、可視領域400~800nmにおける平均透過率は54.8%、近赤外1600nmの調光率は34.5%を示しています。

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グラフ 赤外線サーモクロミックガラスの分光透過スペクトル

スマートウィンドウに適用するためには、結晶相転移温度を応用用途に応じ適切に制御するドーピング材料開発が課題となっています。本研究では、ドーピング材料としてNbを選択し、添加濃度が多くなるにつれて相転移温度が大きく低下しており、可視光透過率は50%以上、相転移温度は50℃以下に制御できる結果も得られています。また、相転移温度幅(転移状態が確認される温度範囲)は、無添加試料に比べてNb添加試料では、拡大する傾向が確認されています。

当社が材料を開発・合成し、大阪工業大学にて成膜プロセス開発と評価を分担して取り組み、本成果は、2023年度の電気学会にて論文賞を受賞しました。



令和5年 電気学会 基礎・材料・共通部門特別賞 (論文賞)
「MOD 法による Nb , Ta 添加 VO2 薄膜における相転移温度の低温化」
和田 英男*、扶川 泰斗*、豊田 和晃*、小池 一歩*、河原 正美**
*大阪工業大学、 **高純度化学研究所
https://doi.org/10.1541/ieejfms.142.221

知財情報
特開 2023-018549
「調光ガラス及びその製造方法、並びに、前記調光ガラスを構成する多孔質モスアイ構造の二酸化バナジウム薄膜」
特願 2022-165164
「二酸化バナジウム薄膜の製造方法及び二酸化バナジウム薄膜形成用原料溶液」

関連製品・サービスのご紹介

CSD材料

https://www.kojundo.co.jp/material/thin_film_material/csd.html



※使用する図につきましては、権利等の確認済みです。
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