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先端研究のウラに高純度あり その3 -マルチフェロイック薄膜と成膜材料-

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先端研究のウラに高純度あり その3 -マルチフェロイック薄膜と成膜材料-

時には私たちの生活が変わってしまうような最先端の研究のウラに、高純度化学研究所の存在があります。今回は「マルチフェロイック薄膜材料」のご紹介と、この材料合成に携わる当社技術者のお話をお送りします。

マルチフェロイック

マルチフェロイック材料とは、強誘電性、強磁性、強弾性を併せ持つ極めて多機能な材料で多くのデバイスへの応用が期待されている新材料です。 一つの物質の中に、磁石の性質(磁性)と強誘電体の性質を兼ね備えており、外部の磁場を変化させることによって誘電的な特性(電気分極)を制御したり、電圧を変化させることによって磁気的な特性を制御したりすることができます。そのため、次世代の新型メモリやエネルギー変換デバイスなどへの応用が期待されています。  中でもビスマスフェライト、BiFeO3(BFO)は優れた強誘電性を示すことが知られており、大変注目されています。

先生の研究紹介

BiFeO3は、優れた強誘電性に加え、反強磁性秩序を併せ持つマルチフェロイック材料です。さらに、強誘電性ワイドバンドギャップ半導体としての応用可能性も示唆されています。 BiFeO3を半導体として利用するためには、まずは、不純物や酸素欠損が無く、絶縁性の高い真性BiFeO3薄膜が求められます。 藤沢先生のチームでは、高酸素分圧下での成長による酸素欠損低減と、有機金属化合物を出発原料とすることで高純度化が期待できる有機金属化学気相堆積(MOCVD)法に着目し、その技術開発を進められております。MOCVDに用いる原料供給量の変動によらず、薄膜組成がほぼ一定に保たれるプロセスウインドウの存在を見いだすとともに、極薄Fe2O3バッファ層の導入がプロセスウインドウ内での精密な薄膜組成制御を可能にし、絶縁性を向上させることを明らかにしました。

図の説明 原料供給量が変化しても薄膜組成はほとんど変化しないプロセスウインドウが存在する(■)。 絶縁性の高いBiFeO3薄膜を得るためには、プロセスウインドウ内で薄膜組成を1%以内の高い精度で制御する必要がある()。

Copyright (2019) The Japan Society of Applied Physics

出典: “Composition control and introduction of an Fe2O3 seed layer in metalorganic chemical vapor deposition of epitaxial BiFeO3 thin films“

Japanese Journal of Applied Physics 58, 041003 (2019)

https://doi.org/10.7567/1347-4065/ab045f

当社への依頼

MOCVD用のBi及びFe原料としてBi(C6H5)3及びFe(thd)3の需要がありました。この二つの物質はBiFeO3の成膜材料としては広く研究されている物質ですが、品質の良い薄膜を作りたいため、一般的なものよりも更に高純度な材料が欲しいという依頼でした。原料や製造方法の見直しから始まり、使用する器具類分析方法を吟味し、対応しました。

技術担当者より

要望のあった高純度なMOCVD用Bi及びFe原料を検討し、Bi(C6H5)3は99.999%、Fe(thd)3は99.9999%の化合物を得る製造プロセスを確立することができました。 特に、Fe(thd)3の金属不純物は、一般的な材料の金属不純物の測定方法であるICP発光分析(ICP-OES)では、製造した高純度Fe(thd)3の金属不純物量を測定できないため、より微量の金属不純物が検出可能なICP質量分析法(ICP-MS)を用いて分析を行う手法も開発し、高純度Fe(thd)3を提供できることができました。(Higashi)

営業担当者より

当社の社名にもある『高純度』材料の要望を頂き、非常にうれしかったことをはっきりと覚えています。今後も、このような要望を入手し、ユーザーに提供できるよう、頑張っていきます。(Hashi-guchi)

藤沢先生より一言

我々は半導体クオリティの高品質強誘電体薄膜を目指して、MOCVD技術を追求しています。 要望以上に高純度なMOCVD原料を提供頂き、その実現に一歩近づくことができました。

https://researchmap.jp/read0051128

謝辞:イラストのご提供及びこの記事の作成には、兵庫県立大学 藤沢先生のご協力を頂きました。ありがとうございました。

関連製品のご案内

成膜材料

・MOCVD材料はWebに記載されている品位だけでなく、各種仕様、シリンダー充填品等に対応いたします。お気軽にご相談ください。

・Fe(thd)3  bis-2,2,6,6-tetramethylheptane-3,5-dionatoiron(III)

https://www.kojundo.net/category/FE007/FE03000_ASK.html

・Bi(C6H5)3 triphenylbismuth

https://www.kojundo.net/category/BI007/BIR05GB_ASK.html

 

・CSD材料

CSD材料とは塗布、焼成することで薄膜を形成する材料群です。CSDを用いたBiFeO3薄膜の物性研究にも応用されております。CSD材料に関してはこちら

・各種スパッタリングターゲット

各種組成に対応いたします。ご相談ください。


マルチフェロイック材料の評価システム

 ラジアント・テクノロジー社が提供する磁気電気応答計測システムは、バルク体のみならず薄膜試料の磁場印加により発生する微小電荷を計測します。

 マルチフェロイックキャパシター、または、磁気電気複合デバイスで発生した電荷を計測します。このプログラムは各種コイルや磁場センサーと組み合わせることでも計測可能です。

 詳しくは下記をご覧ください。

https://www.kojundo.co.jp/material/device/radiant_products/options.html#link02

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